店長はこう考えます
---氷見の魚のおいしいわけ---
私は、この氷見市に生まれ育ち、これまでずっと地元氷見の魚を食べてきました。そしてこれまで、氷見は元より加賀、富山、高岡・・・いろいろなところで板前の修業をしてきました。そんな中で、いつも不思議だったのは、
「同じ魚料理なのにどうして氷見の魚だけが特別おいしいのか。」ということでした。
そこで、自分の店を開くにあたり、
この地元氷見の魚にこだわってみたい、
と思いました。そして、氷見の魚について徹底的に勉強してみたいと思い、いろいろな本を調べてみました。
すると、そこには確かにわけがあったのです。
その結果わかったことを、みなさまにもお知らせしたいと思います。
氷見の魚がおいしいわけ
氷見沖では冷水性、暖水性両方のいろいろな種類の魚がどこにもないおいしい魚に育っています。それは、
・特徴的な地形
・異なる性質の海水の重なり
それと、そこで捕れた魚をおいしいままで味わっていただこうという
・関係者の努力
等によるものです。
もっとくわしく知りたい方は次へお進みください。
①特異な地形
氷見沖は大陸棚が狭く、
沿岸から急傾斜(平均700m)
で水深 1000m の深い海になっています。(最も深いところは1200m 以上もあります。)
魚が岸の近くまで寄りやすい状況
になっているのです。しかも、
湾の奥の海底には大小の尾根や深い谷間(海底谷注*)が数多く刻まれた独特な地形をしています。
(世界一といわれる海底谷「富山深海長谷」も存在しています。)(*海底谷・・漁師さんの間では藍瓶(あいがめ)とかふけと呼ばれています。
海底谷は貝やえびなどの深海の生物のすみかとなっています。
②層を成す3種類の海水
氷見沖には、冷水性、暖水性両方の魚が棲んでいます。それは、
1⃣日本海固有水(深層水)の上に
2⃣対馬暖流系の水が乗った形になっていて、さらに岸近くの表層には
3⃣河川水の影響で塩分の低くなった沿岸表層水が分布しているからです。
もう少しくわしく
1⃣年間を通じて水温1~2℃の深層水
ここには、冷たい海に棲む魚類(シロエビ、甘エビ、バイ、ズワイガニなど)が棲んでいます。
2⃣温暖な対馬海流
西側に突き出した能登半島に沿って対馬暖流が湾内に入ってくるので、南の温暖な海の魚類(ブリ、アオリイカなど)も棲んでいます。
河川水の影響で塩分の低くなった
3⃣沿 岸 表 層 水 が岸近くの表層に分布している
表層には多くの河川が森からの栄養を海底に送り込むため、
ケイソウやミジンコなどのプランクトンがいっぱい育ちます。
これが氷見沖の魚たちに格好のえさ場を提供しています。
春、木々の根元から溶け出した大量の雪が、川となって流れ出し、扇状地を経て、さらに深海までたどり着きます。氷見海岸の向こうに見える3000m級の
北アルプスの山々からの雪解け水は地味豊かな山の土を通過するうちに豊富な有機質を運び、
海の中にたくさんのプランクトンが育ちます。
そのプランクトンを求めてたくさんの魚が集まってくるのです。
ふつうは、深海は栄養が乏しくて、生物は育たないと言われていますが、富山湾は違います。年間を通じて低温がゆえに、深海でも、安定性があり、菌の繁殖を抑え、栄養性に富んでいるのです。
さらに水温の低下する秋から冬にかけては、日本海西部海域へ南下する魚(ブリ、アオリイカ・・・etc.)が西側に能登半島を突き出させて、まるでポケットのように口を開けて待っている富山湾にぞくぞく入ってきます。
日本海の荒波を越えてきたブリは11~2月ごろ、産卵を前にして最も脂ののった状態で、丸々と太り、それでいて冷たい海の水で身はギュッと締まっています。「氷見の寒ぶり」と呼ばれ、脂ののった日本で一番おいしいブリとして、全国的に名を馳せています。
このように、氷見の沿岸近くに網を張っておけば、暖水性から寒水性まで、さまざまなおいしい魚が確実に入ります。
これが、「天然のイケス」といわれる所以です。
そして忘れられないのが、鮮度保持のための漁師の知恵
③氷温での移動(鮮度保持のための連係プレー)
です。
氷見はこの好漁場と漁港がとても近い
(漁場までの距離はわずか1.5~4キロほど)のですが、そのわずかの移動の間も鮮度が落ちないように、と氷見の漁師さんたちは、いろいろ工夫しておられます。捕れた魚はそのままにしておくと、暴れて急激に鮮度が落ちてしまいます。それを防ぐために考えられたのが
沖ジメといわれる氷見独特の輸送方法です。
捕れた魚をすぐに船底の水氷(みずごおり)でしめ、瞬時に仮死状態にします(これを沖じめといいます)。さらにそれらを傷めないよう注意しながら、船上で分別し、漁港に着くやいなや、せりにかけます。
(魚は、暴れると体力を消耗してまずくなるけれど氷温*での保冷は呼吸代謝が抑制されるため、細胞の活性が保たれて反ってうまみがますようです。
___実際に漁に出ている漁師さんに聞きました___
注* 氷温・・・0℃から氷結点(魚が凍り始める温度)までの未氷結温度
「かみしま」では、こうした関係者の努力をそのまま引継ぎ、午前中に仕入れた魚をすぐに調理し始めます。その日に捕れたばかりのキトキトの(新鮮な)氷見の魚をその日に食べていただきます。お客様の目の前でご注文に応じて料理いたします。焼き物、刺身、酢の物、汁物など、お客様のお好みでお申し付け下さい。
ご注文をいただいてからの調理になりますので、少々お時間をいただきます。お急ぎの場合は予め、ご予約なさることをお勧めいたします。
なにぶん、自然が相手ですので、その日の漁の具合によってご希望にそえないこともございますがその節はお許し下さい。
*日本海固有冷水
このことについては、富山県/みんなの宝 神秘(しんぴ)の海 富山湾(わん) (pref.toyama.jp)をご覧下さい。
参考資料 富山がわかる本(富山県統計課編)
「富山湾」(藤井昭二編著)